感動して涙が出る日常
心が動くことを、感動という。私は非常に感動しやすいタイプで、どういった感動でも大概涙が出る。「ごめん、笑って涙出た」は日常茶飯事で、最初の方こそ「なんで泣いてるの!?」と言われたが、周りも慣れてきて「また泣いてる」と思われている。
以前、好きな俳優であるところの松下洸平さんが『池の水ぜんぶ抜く』に出演したのを見た。番組表をローラーしていたところでたまたま名前を見つけ、場所も城のお堀であることから、私の興味を惹いた。番組には、洸平さんと他の芸能人の方に加え、地元山口県の高校生が参加していた。番組序盤、これから水ぜんぶ抜くぞ、という段階で高校生たちが「がんばるぞ、おー!」という掛け声をした。その瞬間、私は涙を流した。
その高校生たちにも、岩国城という場所にも、山口県にさえも何の思い入れもなく、何に感動したのかは今でもわからないが、その刹那、私の琴線に触れる何かがそこにはあった。私はその時の感動の正体を知りたくて、涙を流したという事実を忘れずに胸にしまっている。未だにヒントはない。
夏、超特急のライブに行ったときのことだ。2023年のツアー「B9 Unlimited」では、同年デビューの後輩LienelとICExが日替わりでツアーに帯同し、オープニングアクトを務めていた。7月17日のパシフィコ横浜公演では、2グループが共に出演したLienelとICEx両グループのパフォーマンスと挨拶が終わったとき、私は泣いていた。
このときのことはよく覚えている。「この子たちは、ときに喧嘩して、ときに挫折して、ときに震えるほど嬉しいことがあって、そんな風にいろんな景色を見ながら、だんだんと大きなグループに育っていくんだろうな」と考え、若者のまだ見ぬ未来を思い感動して泣いた。一緒にいた友人には「まだオープニングアクトだよ!?」と言われた。
直近で大泣きした思い出がある。これも超特急のライブで、2023年末「T.I.M.E -Truth Identity Making Era-」の大阪城ホール公演に行ったときのことだ。大阪2日目、ツアーのファイナル公演。前日もライブに行っており、本編は同じセットリストだったので、流れはわかっていた。本編ラストの曲は「SURVIVOR」だ。
2番のBメロあたりでのことだった。モニターに抜かれたユーキを見たとき、一瞬で涙があふれた。にじんだ、流れたなどではなく、まるで水風船が弾けるように、一気に爆発した。このときのユーキは、一言で言えば「本気の目」だった。モニター越しに目が合っただけで、ユーキがこのライブに込めた思い、最後にこの曲を持ってきた意味、超特急に賭けているという強い気持ち、すべてを感じられるようだった。
もともとライブでは特に感動してしまうタイプだ。大泣きした記憶で言えば、2019年の欅坂46の東京ドーム公演で「角を曲がる」を聴いて立てなくなったし、2021年のDISH//の10周年記念ライブでは「Starting Over」を聴いて膝から崩れ落ちた。ほとんどのライブで泣いてしまうため「あやちゃんが泣かないライブなどない」と友人に言われる始末だ。まあ事実である。
とはいえ、普段は歌詞やMC、演出などのストーリーに感動することが多く、言葉のないものに大きく感動した経験はあまりない。それでも「SURVIVOR」でのユーキの目は、今でも鮮明に思い出せるし、爆発こそしないが思い出すだけで涙が出る。
ファンクラブに入会したときはまだ全然超特急のことを知らなくて、ほとんど直感でユーキを推しメンに選んでいた。その選択は間違っていなくて、私は一生この人に心を動かされるのだなと思った。
感動するのはとても楽しい。小説やドラマ、音楽などにたくさん触れるのは感動したいからだ。こういうことに感動するんだ、と気づくことは、自分でも見えていなかった自分の内面を見るきっかけになる。感動の背景と自分の思いを照らし合わせる作業が楽しい。そうして理解した自分の価値観や感情を、今度は自分が芸術として外に出せたらいいなと強く思う。