振られたのでサイトを立ち上げた
結婚したいと思った人がいた。提案したが断られた。付き合っていたわけでもないので、相手からすれば寝耳に水だっただろう。
特大な恋愛感情を抱いていたわけではなかった。むしろ恋愛感情はなかった。とはいえ友人に対するそれとも違い、この感情が「推し」に近いものであることに、当時の私は気が付かなかった。
思えば人の感情を読もうとしすぎる人生だった。友人だろうと恋人だろうと家族だろうと。待ち合わせ場所は決まって相手の家の近くにした。土日休みじゃない人なら、私が平日に休みをとった。どんなにパクチーが苦手でも、相手がエスニック料理を望めば一緒に食べに行った。
私にできることなら、何でもしたかったし、何も持っていなかったから、それくらいしかできることがないと思っていた。
「何が楽しいんですか?」「何がしたいんですか?」
ずっとヘラヘラしていた私に遠慮なく――時になさすぎるほどに――ずけずけと物を言う人だった。今まで誰も触れることのなかった心の扉をその人は容赦なくこじ開けてきた。
心の扉をこじ開けられるというのは、決して悪いことだけではなかった。その人は、私にできそうなことをひとつひとつ丁寧に考えてくれた。
「文章書けるじゃないですか」「絵が描けますよ」「なんか作って出してみたらいいんじゃないですか?」「サイトなんて誰でも作れますよ」
結局、私はサイトを作って何かを置くことにした。何を置くかはあえて決めない。やってみたいと思ったことをなんでもやってみることにした。
『yamchanman museum』はこうして誕生した。作りかけでも公開することにしたのは、完璧主義の私のことだから、完成したら公開するなどと言っていれば一生日の目は見ないと思ったからだ。
「yamchanman」は「やんちゃんまん」と読む。「yanchan」にしなかったのは、何となく「やまちゃん」を引きずったから。「ちゃんまん」の部分はタクヤさん(超特急)のInstagramのID(@takunicochanman)から響きを拝借した。「museum」の部分は、用途を決めず何でも置く博物館的な場所をイメージした。というのは後付で、このタイトルを考えている時に、原因は自分にある。の「Museum:0」が流れていたから美術館モチーフいいな、と適当に思った。そうして名前を読んでみたら、「アンパンマンミュージアム」に響きが似ていて気に入った。
作ってみたら意外と楽しくて、この美術館に何を展示しようか考えてワクワクしている自分がいる。創作意欲は十分だ。
今の私ならどうだろう。以前よりも自信がある気がする。