みたらしと青春

お団子が好きだ。街を歩いていてお団子屋さんがあるとついつい立ち止まってしまう。中でもみたらし団子が好きだ。みたらし団子を食べているとき、私はいつもシャープペンシルを思い出す。


中学生のとき、調理実習でみたらし団子を作った。みたらしの餡というのは、小豆や胡麻などの他の餡に比べて粘度が低く、食べているときに垂れやすい。特に作りたての温かいみたらし餡ならなおさらだ。

例に漏れず、私は団子を食べる最中に、口元からみたらし餡をこぼしてしまった。こぼれ落ちた先に待っていたのが、エプロンの胸ポケットにしまってあったシャープペンシルだった。


友人の影響で、映画『下妻物語』を見たことをきっかけに、ロリータファッションに興味があった。特に、映画で主人公が着用していたブランド「BABY, THE STARS SHINE BRIGHT」が好きだった。友人と、街中に繰り出しては、仙台フォーラスに行ってBABYのお洋服を眺めていた。当時の仙台フォーラス7階は、BABYをはじめ、「Angelic Pretty」や「h.NAOTO」などロリータ・ゴスロリファッションの店が立ち並んでいて、とにかく私たちをワクワクさせた。

中学生の私たちが何万円もするお洋服に手を出せるはずもなく、いつも眺めるだけだったが、たまに少ないお小遣いでも買えるものがあった。アクセサリーやキーホルダー、文具などの雑貨類だ。ある日私は、BABYとチャーミーキティがコラボしたシャープペンシルを購入した。初めてBABYのお店でお買い物ができて本当に心が躍った。その日からお守りのように毎日持ち歩き、学校でも家でも毎日使っていた。


不幸なことに、みたらしを被ったシャープペンシルは、私が肌身離さず持っていたそのBABYのシャープペンシルだった。私はすぐさま団子を置いて、シャープペンシルを拭いた。さすがに水洗いはできないと思ってとりあえずティッシュで拭いた。しかし、胸にまっすぐ挿したシャープペンシルの真上からみたらしを浴びせてしまったため、芯を入れるところからみたらしが入りこんでしまって、なかなか取れない。できる限り拭いたが、その日以降、シャープペンシルから甘ったるい匂いが取れることはなかった。

少しベタベタで甘い匂いのするシャープペンシルを長く使うことはできず、しばらくして家のペン立てにしまった。とてもショックで、それから長いことみたらし団子を見ると後悔の念が襲ってきて、食べられなかった。私は胡麻団子派に転向した。


時が経ち、私は大人になった。街を歩いていたとき、お団子屋さんが目に留まった。美味しそうなみたらし団子が売っていた。久しぶりにみたらしが食べたいなと思い、買ってみた。やっぱりみたらし団子は美味しかった。シャープペンシルのことはまだ思い出す。ベタベタのシャープペンシルを手に落ち込んだことを思い出す。それでもやっぱり、みたらし団子が好きだ。年を重ねて、ようやく美味しさが悲しみを上回った。