ふわふわのシナモン、とげとげの私、もちもちのシナモン

新しいものを受け入れるのが苦手だ。そのくせ「もっと早く好きになっていれば……」と嘆くこともある。存在は知っていたのに、新しいものに触れるのが苦手なばっかりに好きになるのが遅くなり、結果として損をした気分になる。

幼少期の頃はマイメロディが好きだった。姉と二人姉妹だった頃、姉がハローキティで私がマイメロディと親が勝手に持ち物の柄を割り振っていたので、物心がついた頃には「自分はマイメロディが好きなんだ」と思い込んでいた。


小学2年生の時に、シナモロールがデビューした。小学校にはふわふわで愛らしいシナモンのグッズを持ったクラスメイトがたくさんいて、私はそれを「所詮新人だ、いっときの流行りにすぎない」と冷めた目で見て、興味がない顔をしていた。斜に構えていて、どこか「古いほうが偉い」みたいな価値観があるのかもしれない。客観的に見ると懐古厨みたいであまり良い気はしない。

大人になってからできた友人にシナモンが大好きな人がいた。最初は「私はマイメロ派なので」と興味がない風を装っていたが、友人が持っているシナモンのグッズやしきりに勧めてくるシナモンのYouTube動画をなんとなく見ているうちに少しずつ気になり始めた。最初は友人の肩越しに見ていたYouTubeも、そのうち自分で検索して見るようになったり、いつの間にかTwitterをフォローしたりしていた。シュクルタウンに住んでいるおともだちもみんな可愛くて名前を覚えた。ショート動画を暗唱できるようになっていた。気がついたときにはシナモン推しになっていた。

そうしてシナモンオタクとして生活し始めた矢先、シナモロールの新しいブランド「I.CINNAMOROLL」が誕生した。

“もしあの日「カフェ・シナモン」のお姉さんと出会っていなかったら…?”という、もう一つの世界を描いた新ブランド「I.CINNAMOROLL(アイシナモロール)」が誕生!
人の目より自分の目を大事にして、カラダとココロを大切にする“ご自愛”マインドを持った、ちょっぴり大人なシナモンだよ♡

従来のふわふわアイドルのシナモンよりもシンプルなビジュアルで、初見で私は「Discordのアイコンみたいだな」と思いあまり気に入っていなかった。みんなを笑顔にしようと一生懸命なシナモンが好きなのであって、こういうシナモンは違うかなとあまり興味を持たなかった。

友人はアイシナモロールも好きだった。日々YouTubeやTwitterを見ては「『ゆるドキ☆クッキング』おもしろいですよ」「アイシナのアニメ公開されましたよ。丁寧な暮らしをしています」などと報告をしてくれた。一度『ゆるドキ☆クッキング』を肩越しに見たことがある。私の好きな安田顕がシンプルなシナモンに振り回されていた。オリジナルシナモンならきっとこうはならない。ちょっとおもしろそうかも、と思った。

先日、友人とサンリオショップに行った。最近出たばかりのアイシナモロールのグッズがあった。友人があっという間にアイシナグッズ売り場に吸い込まれていったので、つられるように私も眺めた。アイシナのぬいぐるみはもちもちしていて気持ちよかったし、ノートやステッカーもとても可愛かった。その中で「ゆらゆらグラス」が目に留まった。サングラスをかけたシナモンが、サングラスをかけたミルクを抱いたイラストと、左上には「あいしな?」の文字が書かれている。

そこで初めて「アイシナモロール」という名前が「(自分を)愛しな?」というメッセージを含んでいることに気がついた。そうか、ご自愛マインドとはそういうことか。


私はいつも他人のことを考えて自分のことを後回しにしてしまう。正直そんな生活に疲れたなと感じることもある。急にその「あいしな?」の4文字がスッと心に染み込んできた。いいな、と思った。

家に帰って、YouTubeでアイシナモロールを見た。『ゆるドキ☆クッキング』では、思ったことをすぐ口にしたり世間知らずだと落ち込んだり、アイシナアニメでは、自由気ままに寝たり絵を描いたり、自分に正直に生きているシナモンがとても魅力的だった。

アイシナと一緒なら、自分に正直に、自由に生きられるかもしれない。もっと早くに見始めれば良かったな、と少し反省した。だけど、人生はまだ長いのだ。30年目で変化できたのは早い方じゃないか、と自分を宥める。時間がかかってもいい、本当に自分が好きになれるものをゆっくり受け入れていけばいい。アイシナを好きになった私は、前より自分のことを愛せるかもしれない。そんな未来にわくわくする。

今月末、アイシナのPOP UP STORE「はじめまして、アイシナモロール」に行く。ちょっぴり自分を甘やかしすぎてグッズをたくさん買ってしまう未来が見える。まあ、そんなことがあってもいいじゃない。ね、シナモン。